OAXACAN WOOD CARVING `O.W.C` オアハカ ウッドカービング

OAXACAN WOOD CARVING  オアハカ ウッド カービング、略してOWC、特にこれといった名前はなく、現地でもFIGURA DE MADERAとかTALLA DE MADERA 、共に木彫りの人形とか単純に`木彫り`の意味合い、木彫りのアレ、みたいな感じで呼ばれてます。わかりやすい英文表記でOAXACAN WOOD CARVINGと認知されてます。よく、ALEBRIJES アレブリーヘス(メキシコシティの有名なリナーレスファミリーが作る、張り子で作る空想の世界の奇妙な怪獣や生き物、ファンタジックな世界)と一緒にされますが、1980年代後半に外部から来たバイヤーがオアハカの職人さん達にアレブリーヘス風の木彫りを作らせたのがたまたま有名になり、アレブリーヘスと名乗ったほうが商売として売りやすいのでそうしてるのだと言われてます。なので元々のルーツはアレブリーヘスとは異なります。(アレブリーヘスは張り子です)

OWCの歴史は古く、はっきりとした年数は不明ですが、100年以上前からカーニバルで使う木の仮面や農作業で使う農耕具(牛に引かせる荷車など)を作る際、余った木で子供のおもちゃなどを作ってたのが始まりです。

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(独特の表情をした古い木彫りの仮面達。雰囲気ありますよね。)

1948年、近代オアハカの歴史上、節目の年、パンアメリカンハイウェイの開通、今まであまり外部の人間が訪れることが少なかった土地、様々な手仕事の文化が広がっていくきっかけになった、この道が出来てなければ、ここまでメキシコのフォークアートが世界中に広がることはなかったと思います。 モンテアルバン(紀元前、サポテコ人の遺跡)の発掘もあり、オアハカに観光客がやってきて、お土産物としていろんなデザインの動物たちが作られるようになり、赤いアルマジロや黄色いウサギ、青いキリンなど本来の動物には`存在しない色`をあえて使い、創造力をかきたてる、そんな木彫りの動物たちは観光客に人気がありました。

1960年代から70年代にかけて、世界中のフォークロアコレクターがオアハカに押し寄せ、オアハカラグやウッドカービングなど、素晴らしい手仕事の民芸品を目の当たりにします。

1963年、69歳でメキシコを旅行された濱田庄司さんもこのようなOWCを買い集められ、現在の益子参考館に所蔵されてます。

そして2015年現在、オアハカでは3つの産地があります。

まず、ティカヘテ村

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村全体の産業としてOWCが作られてます。ただ、そんな中でもセンスの合う職人さんはほんの一握り、みなさん`技術`はすごいのですが、すごすぎて、素朴な木彫りの雰囲気がない。。。最初、村に通い始めた頃、1960〜70年代頃の昔ながらのOWCを求めていろんな職人さんを訪れたのですが、だいたいアポなし、コネなし、いきなり行ってたので`変な外国人が訳のわからないこと言ってる``こいつ、頭おかしいんじゃないか?!``そんなもの作ってる時間なんかない!``どうせ作るなら、高く売れるものをつくるだろ``なんでそんな昔のものを欲しがるんだ?!今の物の方が素晴らしいだろ` 9割方そんな対応をされました。。。

そして出会ったのがフエンテスファミリー、技術もセンスも抜群!自分と合うんですよ!言ってることのニュアンスを掴んでくれる!素晴らしい出会いでした。フエンテスファミリーのフロレンシオさん、彼のおじいさんは100年前ぐらいから村のお祭りで使うマスクを作る職人さんでお父さんは農耕具を作る職人さん、そんな職人家族に生まれたフロレンシオ、10代の頃、ちょうど1970年代ぐらいから木彫りを始め、現在は村を代表する立派な職人さん、彼に出会って自分が欲しい素朴な木彫りの話をしたら、懐かしいな、じゃあやってみるか!と言って出来たのが上の写真、なんとも言えない、素朴な表情、荒削りな木彫り、さっと簡単に仕上げた色つけ、最初見たとき感動しましたね。逆にフロレンシオさんからは`こんなのでいいのか??ほんと、昔子供たちにあげてたようなやつだよ??`と心配されましたがNO PLOBLEM !いいんです!これで、お金儲けのために作られたものではない、邪念のない、すごくシンプルで活き活きしてます。

昔、ウッドカービングを始めた頃、技術はそんなになかったけど、楽しく作ってた頃を思い出してもらいました。今はすごい技術をお持ちですが、これらはスペシャルとして、何も難しいことを考えずに、当時のやり方で、自由に、自然に作ってもらってます。なので1点1点、微妙な味というか、表情が異なります。

素材となる木は`コパル`(宗教儀式などで焚く樹脂、お香などの原料になる)を作る木を使い、水分をたっぷり含んだ、しっとりした木でそれらをナタで削り、動物の形にします。今の物はさらに細かく掘って仕上げもキチンとやるのですが、昔の物はある程度まで仕上げ、足や手なども釘で打ち付け、模様を描く程度でほとんど色は付けられてなかったとか。1950年代頃からオアハカを訪れる観光客や海外のコレクター向けに`色`や`模様`を付け始め、同じ頃に起こったメキシコシティの壁画運動からアクリル絵具が普及し、アレブリーヘスの影響もあり、大きな作品に細かいペイントを施し、より工芸品に発展していきました。

昔のものはアクリルではなく、アニリン染料を使い、色つけや絵付けも簡単に、もともと子供向けのおもちゃやお土産物だったので1個1個の作る時間も短い、水分を多く含んだコパルの木が乾燥していくにつれて、アニリン塗料の色も褪せてくる、経年変化が楽しめます。

つぎにアラソラ村

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こちらも先のティカヘテ村同様、村全体の産業としてOWCが作られてます。世界的に有名な作家さん宅もあります(非常に大きな作品で100万エンぐらいするものもありました。。)ティカヘテ村と比べ、やや作風の違いがあるぐらいで、ほとんど同じです。この村でもいろいろアタックしましたが、ほとんど相手にされず、、、一家族だけセンスの合う、こっちの希望を理解してくれたのがファレスファミリー、女性がメインで作ってる珍しいファミリーで木彫り自体は60年代頃から変わってない(女性なのであまり大きな作品や奇抜な形は作れない)、色つけがアクリル塗料を使って細かく繊細になってたのをアニリン染料で昔ながらの雰囲気でお願いしたのが上の写真、フエンテスファミリーとは作風が異なり、女性ならではの繊細さや愛らしさがある、コパルの木が乾燥し、色が褪せてくるのが楽しみな作品たちです。あくまで個人的な感想ですが、ティカヘテ村のフエンテスファミリーはアメリカっぽい、ラフでおおらかな感じ、アラソラ村のファレスファミリーはヨーロッパっぽい、昔ならがの作りでも丁寧さがある、そんな気がします。どちらも好きです。

そして最後はラウニオン村

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ここはティカヘテ、アラソラ村と異なり、1960年代から1ファミリーのみがウッドカービングを作り続けてます。マーティンサンティアゴさんと弟のキリーノサンティアゴ、息子のハイミー、そして親戚たちです。他の村とは作風が異なり、より一層、昔ながらの雰囲気で今も作ってる、外部からの影響をほとんど受けてない感じがします。アメリカ、カリフォルニアやテキサス、アリゾナにいる一部のマニアックなコレクター達に人気があります。染色家 柚木沙弥郎さんの家(カーサブルータスを持って行って見せたら、これは多分俺のだと言ってたので)にあるのもこのファミリーの作品だと思われます。この村はこの家族しか作ってないので素材となる木も本来のコパルではなく、すでに乾燥してるハカランダの木をつかい、色つけもしっかりしてます。やや大きめな作品が多いです。

そんなOWC、インテリアの一部として取り入れると、部屋の雰囲気が明るくなるような。。。あの濱田庄司さんも動物好きでこのような木彫りたちに目がなかったとか。。日本の民芸運動の重要な人物たちが集めてた昔ながらのOWC、自分もハマってしまい、昔ながらの素朴で純粋な作品をお願いして作ってもらい、日本の民芸好き、インテリア好きな方たちに響けばと思います。